Old Smith & Wesson Knives

当初はオールドS&Wナイフネタを書こうと思っていたのが、この頃は60~70年代アメリカン・ナイフ再発見の話です

シース

The Sheath

The sheath furnished with each Smith & Wesson knife is hand polished, top grain cowhide made by our own leather craftsmen. All sheaths feature a lock-snap belt loop that opens in one direction only.

シース

それぞれのSmith & Wessonナイフに与えられるシースは、手で磨かれた牛表皮製で、自社の革職人により作られます。すべてのシースは、一方向からのみ外すことのできるロック式スナップボタンで留められるベルトループが特徴です)

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パンフレット Model 6020 Outdoorsman

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Outdoorsman Model 6020

An ideal general purpose hunting and camping knife with richly graind black Wessonwood handle that is contoured for sure, comfortable grip. Full length flat spine provides substantial working surface right down to the point. Emergency equipment cavity in handle has protective knurled brass end cap. Overall length is 10 inches, with 5 1/2 inch blade. Weight: 10 ounces.

(確実で心地よい握り心地となるよう外形をデザインされた、木目豊かな黒色Wessonwoodのハンドルをもつ、理想的な汎用のハンティング/キャンピングナイフです。

ブレード全長に及ぶ平たい峰部は、切っ先まで十分な作業面になります。緊急時装備を収めるハンドル内の空洞には、それを保護する、ローレット加工が施された真鍮のエンドキャップを有します。全長10インチ、ブレード5.5インチ、重さ10オンスです)

 画像のソース
http://smith-wessonforum.com/smith-wesson-knives-collectables/106690-s-w-knife-brochure.html

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伝統

いつものパンフレットの冒頭から。

The Heritage

Smith & Wesson has been a name of distinction among sportsmen for more than a century. The S&W seal on the blade of each of these knives is your assurance that it has been carefully made according to a long tradition of quality.

Smith & Wesson knives have a distinguished pedigree. They have been designed by the hand of custom knifemaker Blackie Collins and bench made with the skill inherited from over 120 years of Smith & Wesson expertise in metalworking.

伝統

Smith & Wessonは、1世紀以上にわたってスポーツマン達の間で著名なブランドであり続けてきました。これらのナイフのそれぞれのブレードに刻まれたS&Wの紋章は、それが高品質の長い伝統にのっとり丹念に造られたことの証です。

Smith & Wessonのナイフは、由緒正しい血統をそなえているのです。それらはカスタムナイフメーカーであるBlackie Collinsの手によりデザインされ、120年を超えるSmith & Wessonの金属加工のノウハウを受け継いだ技術で手造りされました)

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パンフレット Model 6010 Bowie

Bowie Model 6010

Traditional Bowie-style blade configuration,with scimitar-shaped sharpened fales edge.Wessonwood handle is blended smoothly with double quillion brass guard and pommel.The Bowie has a 6-inch blade,is 10 1/2 inches overall and weighs 13 ounces.

(シミター型に研がれたフェールスエッジをもつ、伝統的なボウイ・スタイルのブレード構成です。Wessonwoodのハンドルはダブル・キリオンの真鍮製ガードとポメルにスムーズに調和します。このボウイは6インチの刃長で全長は10.5インチ、重量は13オンスです)

 画像のソース
http://smith-wessonforum.com/smith-wesson-knives-collectables/106690-s-w-knife-brochure.html

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ガードとポメル

The work-hardened brass guard of a Smith & Wesson sportsman's knife is hand
fitted and silversoldered to the blade,a technique characteristic of the
finest custom made knives.Guard,handle and pommel are then hand finished to
a perfectly blended unit for absolute working comfort.

In place of a regular pommel,Smith & Wesson Survival and Outdoorsman Knives
have a knurled brass end cap that screws into the end of the emergency
equipment cylinder,keeping the contents dry and protected.

Fishermen's Knives have an extended tang that provides a secure tie ring for
the lanyard and can be used as a fish stunner.

(S&Wスポーツマンズナイフの冷間鍛造された真鍮製ガードは手作業で組まれ、ブレードに銀ろう付けされます。この手法は最も優れたカスタムメイドナイフに特徴的なものです。ガードとハンドル、そしてポメルは、完全に快適な使用感を実現するために、完璧に融合した1丁となるよう手仕上げされます。

S&Wのサバイバルとアウトドアーズマンのナイフは、通常のポメルの代わりに、緊急時装備を収めるシリンダーにねじ込むことのできる、ローレット加工された真鍮のエンドキャップを備え、このキャップはシリンダーの内容物を保護し乾燥を保ちます。

フィッシャーマンナイフは、手貫き紐を通す環のために延長されたタングを備えます。これはまた魚を〆るために使うこともできます)

 画像のソース
http://smith-wessonforum.com/smith-wesson-knives-collectables/106690-s-w-knife-brochure.html



 ガードとブレードの接合部の隙間があいていると、そこから水気なりが入ってタングの腐食を引き起こす。銀ろう付けは、その隙間を溶接で埋め、固定するものだ。

 低温銀ろうを使用する場合は200度以上の熱を接合部分に加えることになるが、もし誤って500度近くまで上げてしまうとナイフは不良品となってしまう。また溶接後の中和洗浄が不十分なことによる腐食の発生の可能性もある。つまり、工程が増え熟練も必要なので、いわゆる量産品には採用されない手法である。

ハンドル考

パンフレットの記述を見てみよう。

Smith & Wesson sportsmen's knife handles are made of Wessonwood,a distinctly grained natural wood that is pressure impregnated with phenolic resin to give it the hardness and durability required for a lifetime of outdoor use.Wessonwood is dimensionally stable,moisture proof,and as impact resistant as metal.When fitted to the wide,heavy tang and fastened with epoxy adhesive,there is no possibility of the handle turning or coming loose.

The Survival and Outdoorsman models have emergency equipment cavities built into their handles.Uni-Handle construction secures tang,handles and the brass cylinder that forms the cavity with a powerful epoxy adhesive to make one inseparable unit.

S&W Fishermen's Knife handles are durable Brazilian Rosewood,epoxied to the full tang throughout its length.

(S&Wのスポーツマンナイフのハンドルは、生涯アウトドアで使い続けるために必要な硬さと丈夫さを得るため、フェノール樹脂で圧力浸含された、くっきりと木目の通った自然木であるWessonwoodから造られます。Wessonwoodは、狂いがなく寸法的に安定しており、防湿性に優れ、金属のような耐衝撃性能をもちます。幅広く重厚なタングに取り付けられエポキシ接着剤で接着されると、ハンドル材がずれたり緩んでしまう可能性はありません。

サバイバルとアウトドアーズマンは、緊急時装備を収める空洞がハンドルに設けられています。Uni-Handle構造は、タングとハンドル、空洞を形成する真鍮製のパイプを強力なエポキシ接着剤で、分離できない一体のユニットになるようしっかりと固定します。

S&Wフィッシャーマンナイフのハンドルは、ハンドル全長にわたるフルタングをエポキシ接着された、丈夫なブラジリアン・ローズウッドです)



<Wessonwood>

 さて、これらのナイフは少なくとも35年を経ている。私が2丁の6010を購入したのは2002年頃だっただろうか?20年間、箱入り新品の状態で倉庫なり店頭なりに保管され、その後10年程度いろいろな環境で使用されたわけだが、Wessonwoodのハンドルは剥離破損はない。ただし、いずれのハンドルも表面にヘアライン状の浅いクラックが出ており、これは購入時からそのような傾向はあった。

 このクラックは、加工時の熱によるものか、高温、低温の急激な温度変化によるものか、浸水によるものか、あるいはホーニングオイルの影響か、それとも紫外線その他による樹脂の劣化なのか、よくわからない。タングの腐食膨張に伴う内側からのクラックではなく、表面のわずかな膨張によるはち切れたような浅いクラックに見える。

 ちなみに、自分のナイフではないが、知人のコレクションにもやはり同じような現象が見られた。内部のパイプ部分まで完全に亀裂が入ったアウトドアーズマンを見たことがあるが、これはあるいは落下衝撃等が原因だった可能性もある。亀裂はあるが真鍮パイプからは剥離しておらず使用可能な状態だった。

 Wessonwoodというのは、いわゆる強化積層木材で、パッカウッドやダイモンドウッドの類である。手元の6010は、ダイモンドウッドに非常に似ており、あるいはRutland PlywoodからOEM供給を受けていたのかもしれない。ダイモンドウッドはバーチを基材にしており、用途としては「Archery Stock, Pistol Grips, Crafts, Knitting Needles, Ornaments, Pens, Brushes, Awards, Frames, Billiards Tables and Pool Cues, Musical Instruments」とルトプライのホームページに書いてある。

 タフで防湿性あり、というのがやはり謳い文句なのだが、しかし実際のところはいろいろ問題も聞く素材で、加工性が良くない(また、加工時の熱に弱い)、クラックが出る、案外もろく割れやすい等である。これがいわゆる強化積層木全般の問題なのか、特定のメーカーの製品に見られるものなのかはわからない。ただ、日本製の強化積層木でこまかいクラックが出たのは見たことはない(常に水場にあったキッチンナイフのハンドル材が層間剥離したのは見たことがある)。

 バキュームでバーチ薄片にフェノール樹脂を浸含させ、その薄片を積層して、圧力と熱をかけてフェノール樹脂を硬化させるというのが製法なのだが、個人的には時間の経過とともにフェノール樹脂が劣化、圧縮ストレスを受けていた基材がわずかに膨張して悪さをするのではないかと想像している。

 私の結論としては、このようなものだ。

・バーチの積層木なので高級感にいささか欠けるが、真鍮部分とよく調和し、耐久性・耐水性・耐汚性もそれなりにあるので素材としては悪くない選択か?
・とはいえパンフレットで謳っているほど優れた素材ではない。
・クラックが出ても、通常は浅いもので使用上問題が出ることはほとんどないと思われる。もし割れてしまっても破片があれば修復は容易である。

 なお、私の6010は、1976年製造の物は無着色、1978年製造の物は焦げ茶色に基材を着色したもの(ダイモンドウッドでいうところのマッカーサーエボニー)を使っている。時期により変更があったのか、メーカーがあまり気にしていない(混ざっている)のかは不明。テキサスレンジャーナイフは、明らかに異種の強化積層木を使っているように見える。

<ホローハンドル構造>

 ホローハンドルというと、当然強度が気になるところではある。バットキャップを外して中をのぞくと真鍮のシリンダーとタングがナットで結合されているのが見える。タングはある程度の長さがあるので一定の強度は確保されていると思われ、ナイフとしての正常使用の範囲内で問題が出ることはないようだ。しかし鉈のように使うことはためらわれる。せめてシリンダーの材質がステンレス鋼だったら精神衛生上良かったのではないかと思うが、まあステンレス鋼の加工性は良くないから、テストもして真鍮で十分となったのか。

 サバイバル、およびアウトドアーズマンの各モデルは、私は手にとって観察したことはあるが実際に使い込んだことはないので実使用での耐久性はわからない。これらのハンドルの握り心地は素晴らしく、単純なパイプ形状が多いこの種のナイフのなかでは群を抜いている。案外、力学的にも検討され、強度を持たせることが可能な構造なのかもしれない。だが、ホローハンドルにおける強度不安というのは、物理的な問題であると同時に、使う側の心理的な問題でもあって、それゆえ現在では採用されにくい構成ではある。

 物理的心理的強度を犠牲にするに見合った実用上のメリットが感じられない、ということなのだが、一方で、秘密の収納空間に防水マッチや釣り糸釣り針なりの小物を収納するのは、それはそれでちょっとした楽しみであり、遊びの要素があるわけで、そこまで実用性を追求する必要もないような気もする。とすれば、限られた空間に何をどのように収納するか、さまざまに心を巡らせて楽しむのが、この狭小空間の存在価値だろう。

 6010の場合、パンフレットにも写真があるが、タングは異例の幅広さで、強度に注意が払われていることがわかる。スキナーの場合はそもそも初めから高い強度は必要ではないし、ハンドル下端に真鍮のタング受け金具が埋まっており(つまりハンドル下端までタングが通っている)、やはり接合強度は十分という印象だ。


画像のソース
http://smith-wessonforum.com/smith-wesson-knives-collectables/106690-s-w-knife-brochure.html

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ブレード考

<デザイン>

 同モデルでも個体差がかなりあり、良く言えば手造り感覚がある。また、製造時期により外形や研削の仕方に差異が見られる。パンフレットの写真は初期のデザインである。

 手元にある6010は中期(1976年)の1丁と後期(1978年)の1丁だが、ブレード形状は似ているもののかなり異なる。

 初期のブレードはパンフレット図にあるようにリカッソ部分(ブレード切削面の根元部分)に角のある仕上げだが、後に角のないなめらかな仕上げになる。直角部分があることでの応力集中→破断を嫌っての改良だろう。

 パンフレットでは、sharpened fales edgeとあるが、物が切れる状態にまで偽刃に刃付けされたものは見たことがない。ただ、購入後、刃付けをしたければ難しくない程度まで研削はされている。お好みでどうぞということだろう。米国の場合、偽刃を研いであると州によっては法規制の対象になるようだし、シャープな偽刃というのは、一般的な使用では案外危険なものだ。

 本刃のほうは、工場出荷段階ではまったくもって鈍角な刃付けであり、自分で研がなければ使えない。したがって、パンフレットにある、刃付け工程のエキスパートが云々、はいささか実態を伴っていない。ストックが厚く、フラットグラインドで、エッジのキワも厚めなので、初期は鈍器の様相を呈する(殊に6010は)。相当荒い使い方を想定しているようでもある。

 フィレナイフを除いて、これらのナイフに共通するのは、ブレード(ストックだけでなくグラインドも)が肉厚な点で、もちろんこれにより頑丈なのだが、一方で物を切る際にはその能力をスポイルしてしまうし、重量が増すのも考えものである。デザイナーが在世であればその意図を聞いてみたかった点だ。

 1/4インチ厚のブレードというのは、オリジナルのボウイナイフからの伝統と言えばそうとも言えるし、Randallナイフの影響もあったのかもしれない。強度を重視しました、薄いのが良ければキッチンナイフをどうぞ、と言われれば、それまでの話であるが。

 個人差はあるが、米国ではユーザーの使い方はかなり荒いようで、刃先の折れた修理依頼品が頻繁にメーカーに送られてくるというのは、かつてよく聞いた話である(要するに何かをこじり開けるのに使ったりする)。そしてまた、それでも実用性を取って、あくまで刃先を薄めにしていたBuckは一本筋が通っていると思ったりもしたものだ。

 6010から6030までの刃長を5.5インチから6インチに設定したのは、実用ナイフとして妥当な線と思われる。

<素材>

 ナイフに同梱されていたパンフレットによると、modified 440 Series stainless steelで造った、とある。440A/B/Cのたぐいで、元々はベアリング用の鋼材、ナイフに使い始めたのはGil Hibbenで1960年代半ばくらいからだったようだ。今となっては刃物用ステンレス鋼としては一般的な選択だが、当時としては新しめの採用という感じだろうか?

 私の知る限りでは、440Aなのか、Bなのか、Cなのか、特注鋼だったのか特定できる情報はない。使用して得られる印象としては440Cのような気がするが、よくわからない。適正な熱処理がなされた場合、440A、440B、440C、その他を使用感から識別するのは難しい。

 S&Wは、当然ながら鉄鋼材料についてはかなり融通が利いたはずだから、あるいは特注の鋼材を使用していた可能性はある。

<加工>

  Bowie 6010、Outdoorsman 6020、Survival 6030の刃は鍛造、その他は削り出しと、やはりパンフレットには記されている。前述したGil Hibbenが440Cを使い始めたときは、適当なサイズ厚さの材が供給されていないため、丸棒なりから鍛造で造らざるを得なかったが、高炭素高合金ステンレス鋼の鍛造は個人レベルでは困難をきわめたようである。そしてまた、その苦労のわりに、温度管理の不良による品質の問題も発生した。Gil Hibbenは望むサイズの鋼材が入手できるようになってからは鍛造はやめたはずである。

 この点、S&Wにはノウハウも設備もあることから、鍛造ナイフを造るということには意味があったものと思われる(後にS&Wはゴルフの鍛造アイアンにも手を出したが、型鍛造の金型、外注品だったようだが、に問題があり、結果は思わしくなかったようである)。

 もともとS&Wは拳銃分野でも鍛造にこだわりのあるメーカーであった。パンフレットにはエアハンマーで鍛造する様子が載っているが、型鍛造なのか自由鍛造なのか、私には判断がつかない。銃器製造においてはふつうは型鍛造なので、そのやり方を使ったとも想像できなくはない。生産総数が1モデルあたり15,000丁前後だが、この数量で金型を誂えてペイするのかどうかの判断になるのかな?

 鍛造の対象になる比較的大型のモデルは、ストックの刃厚が約6ミリとかなり厚いので、鍛造による工程の省力化(切削工程が楽になる)は多少はあったかもしれない。パンフレットの記述によれば、

-The larger blades for Bowie,Survival,and Outdoorsman knives are forged to induce a grain structure that imparts exceptional edge-holding capability.

-Hand forging gives maxmum strength to S&W blades.

 とあり、一般的な、いわゆる鍛造刃物のアドバンテージが得られることも当然ながら狙っていたと思われるが、鍛造するモデルが限定的だったのは、小型のモデルでは工程上のメリットは薄かったからだろうと思う。

 いずれのモデルも最終的には磨き仕上げとされた。今日のカスタムナイフのような隙のないミラー仕上げではない、バフホイールでの角のダレた磨き、磨き仕上げは七難隠す、ではないが独特の魅力がある。440Cの磨き仕上げというと、やはりGil Hibbenを連想してしまうが、60-70年代アメリカンナイフの黄金時代という感じである。

<熱処理>

 手持ちの情報ではここはまったく詳細がわからない。熱処理についてもS&Wの得意分野であったとしても、銃器と刃物では処理も全く異なるような気もする。使用感では、

・硬度はそれほど低め設定ではないが粘りは十分ある
・手持ちの2本でバラツキを感じない。切れ味刃持ちに問題を感じない
・研ぎ味はやはりシンプルな炭素鋼に敵わない

 個人的には、ステンレス系鋼材の刃物は主にダイヤモンド砥石で研ぐため、そしてまた高番手の仕上げもかけないので、ステンレスだから研ぐのが大変ということはないが、カエリを取り去るのは多少コツが要る。

 画像のソース
http://smith-wessonforum.com/smith-wesson-knives-collectables/106690-s-w-knife-brochure.html

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S&Wナイフ・ヒストリー

 インターネット上にある、オールドS&Wナイフの解説を一部和訳してみた(直訳調なのはご愛嬌)。

 内容のほうは、Clarence E. Rinkeの『The Knives of Smith & Wesson』(限定出版)からの引用と、S&Wのパンフレットからの引用に近いものが見られる。パンフレットの内容は販促材としての役割を持っているため、幾分誇張されているのは割り引いて読んだほうがいいだろう。

 いずれにせよ、当時の社内状況を含めたこのような情報はなかなかないのでたいへん貴重な記事だと思う。

 
 誤訳があればご指摘いただきたい。

 製品の仕様製法についてはパンフレットに詳しく記述されているので、後日あらためてふれてみたい。

引用元
http://iknifecollector.com/group/odds-ends/page/the-knives-of-smith-wesson

『THE KNIVES OF SMITH AND WESSON』
iKnife Collector
 Hosted by Gus Marsh
 January 9, 2013

 Smith & Wesson社は、法執行機関とスポーツマン向け製品のフルライン化のために、1972年にナイフ市場の調査を開始した。社長のWilliam Gunnは、ナイフ作家であるBlackie Collinsと会い、(ナイフの)デザインについて話し合った。Blackieは、大衆のニーズに合致する、さまざまなスタイルのシースナイフのいくつかのサンプルと設計図を提示した。

 Blackie Collinsは、 assisted opening機構やさまざまな自動開刃のナイフをデザインし、人気を博したアメリカのナイフ作家だった。彼は、他のナイフ作家やコレクター達から、世界でもっとも革新的なナイフデザイナーの一人であるとして引き合いに出される人物であり、Blade Magazineの筆者であり創刊者でもあった。Collinsは、2011年7月20日にサウスキャロライナのNorth付近でモーターサイクルの事故のため死去した。

 1972年、 Smith & Wesson社は、Texas Ranger Commissionから、彼らの150周年記念の記念品としてリボルバーを制作してもらえないかとの接触を受けた。この会合を通して、Smith & Wesson Collectors Associationの会員であり、Smith & Wesson社の社史研究者でもあるRoy Jenksは、記念品の拳銃と併せて提供できるものが何かないだろうか?と持ちかけた。この時、Commissionもまた、記念品としてのナイフの購入を検討していたのである。

 Royと、Texas CommissionのメンバーであるJohn Wilsonは、古いテキサスナイフのスタイルに似たボウイナイフのデザインを描き上げた。このデザインパターンはSmith & Wesson社に提案され、Blackie Collinsによりデザインされたボウイナイフが、Wilsonの当初の意図に沿った形に改変された。

  Smith & Wesson社は、テキサスレンジャー記念ボウイナイフは、ナイフ市場への参入にあたり良い出だしであると感じていた。 Smith & Wesson Model 19リボルバーとボウイナイフの組み合わせ販売が提案された。提案は承認され、生産が始まった。そして1973年、Smith & Wesson社はテキサスレンジャー記念品を発表した。8,000セットのナイフとSmith & Wesson model 19の詰め合わせの生産計画が立てられ、追加として12,000丁のナイフ単体が贈答用箱装で提供された。

 テキサスレンジャーナイフは、すべての初期のSmith & Wessonナイフと同じく、鍛造された440系ステンレス鋼から、47の工程を経て手造りされた。それぞれのナイフはブレードの上部にTR1からTR20000までのシリアルナンバーが刻まれた。1973年にSmith & Wesson社から販売されたのはテキサスレンジャーボウイナイフのみであったが、しかしながら、Smith & Wesson社がナイフ事業に参入することを発表するための計画はすでに立案されていた。
 
 工場は、テキサスレンジャーに似た、スタンダード版のボウイナイフと、5インチのブレードと緊急時装備を収めることができるハンドルを備えた、汎用のハンティング/キャンピングナイフ(このナイフはアウトドアーズマンと呼ばれた)の生産を加速した。

 彼らの多用途なナイフのラインナップを拡大するために、Smith & Wesson社は、サバイバルナイフも製造した。これもまた、むくの真鍮製キャップで閉じられる中空ハンドルに収納部分を備えていた。ハンドルは円筒形で、最大限の作業性と生産性を発揮するべく二つのキリオンを有するクロスガードへとつながっていた。5インチのブレードは身幅の広い、平たい峰部と研がれたフェールスエッジをもつ。工場は、この10オンスのナイフがキャンパーとバックパッカーの人気を博することを期待した。

 3インチ、ドロップポイント・ブレードのナイフが、Blackie CollinsによりSmith & Wesson社のためにデザインされ、ハンターのために供された。そのハンドルはくびれ、大型あるいは小型の獣のスキニングを行う際に手になじむような外形とされていた。このナイフはスキナーと呼ばれた。
 
 シースナイフを好まない顧客のために、工場は、フォールディング・ハンターと呼ばれる3インチ刃のロック式折り畳みナイフを提供した。これはニッケルシルバーのボルスターをもつ、頑丈で贅沢な造りのナイフで、ベルトシースとセットで販売された。(Smith & Wesson社の)工場は、この製品を製造するキャパシティがなかったため、彼らはSmith & Wesson社の仕様に基づき、AlcasまたはBowen Knifeに製造を委託した。

 1972年にAlcas Cutlery CorporationはAlcoaにすべて買収された。その10年後、会社役員のグループがAlcas Cutlery CorporationをAlcoaから買い戻し、私企業とした。そして自社買収からまもなく、Alcas Cutlery Corporationは、北米でCUTCO製品を卸すことになったVector Marketing Corporationを買収した。1990年に、CUTCO Cutlery Corporationが製造の子会社としてVector Marketing Corporationに並び設立され、親会社はAlcas Cutlery CorporationからAlcas Corporationと改名された。

 Bowen Knifeは、WalterおよびMichael Collinsにより1973年に開業した。彼らは、初め、CamillusとAlcasと協働し多くの折り畳み式ナイフとシースナイフを製造した。今日この会社はもっと小規模になり、ベルト(バックル)ナイフの製造に特化している。さて、私がなぜセキュリティを通過する際にいつもベルトを外さなければならないのかわかったというわけだ。

 彼らのナイフのラインナップを完成させるため、工場はフィッシャーマンの2種類のシースナイフを提供した。これらはフィッシャーマンズ・フィレと呼ばれ、6インチのブレードとしてデザインされた。より撓らない5インチのブレードをもつ汎用ナイフは単にフィッシャーマンナイフと呼ばれた。

 これら7種類の型がSmith & Wesson社の完成したナイフラインナップを取り巻くことになった。Smith & Wesson社はこれらのナイフを、カスタムメイド製品でありながらリーズナブルな価格という強みを持って広く宣伝した。

 品質と対顧客アピールのためにすべてが行われた。ブレードは、120年以上の鋼鉄鍛造の経験を生かして鍛造された。ガードとポメルは、手作業で取り付けられ、ブレードに銀ろうづけされた。Wessonwoodと呼ばれる、自然木を圧力含浸した特殊材のハンドルはやはり手作業で取り付けられ、長期使用に耐える最大限の耐久性が与えられた。

 それぞれのナイフの切刃は、この作業のためにとくに訓練を受けた職人により研がれ、工場出荷時から鋭利な刃付けがなされた。

<中略>

製造数量は以下の通り。

 Texas Ranger Bowie – 20,000
 Bowie 6010 – 15,000
 Outdoorsman 6020 – 13,000
 Survival 6030 – 17,500
 Collector Series – 3,752 (うち800がコンプリートセット)
 Skinner 6070 – 15, 500
 Fisherman's Fillet 6040 – 4,500
 Fisherman 6050 – 4,500
 Folding Hunter 6060 – 35,000

<後略>

このblogについて

 いわゆるオールドS&Wナイフは1973年から販売が始まって、おおよそ1980年までの7年間製造されていたようだ。

 フォールディング・ハンターを除いては自社製造のこれらのナイフは、製造中止から約35年、現在入手しやすいものではないが、かといって手に入れるのが絶望的かといえばそうでもない、そんな感じかな。見つかれば値段も手ごろである。

 ここ数年の状況はよくわからないが、箱や付属品も含めたデッドストック的な出物を、かつてebayでよく見た。出もとはおそらく米国は田舎の銃砲店の在庫品だったんじゃないかと思うが、現行品であった当時は売れ行きは良くなかったのだろうか?

 これらのナイフは今となっては知る人も少なく、また情報も少なく、誤解されている事柄が多い。いっぽうで私はオールドS&Wナイフのファンなのである。周辺の情報を拾い、組み合わせ、つなぎ合わせて、全体像を見てみようというのがこのblogの趣旨である。

 刃物を用いた凶悪犯罪が時折発生している影響もあり、ナイフに対する印象は良くない昨今である、というか、まあずっと良くなかった気もする。とはいえ、野山で遊ぶには必要な道具であるのも事実であり、良いナイフなり鉈なりがあることで遊びの範囲は広がるものだ。そしてまた、出来の良い道具は使う者の心を楽しくする。というわけで、同好のかたはぜひお付き合いいただきたい。