Old Smith & Wesson Knives

当初はオールドS&Wナイフネタを書こうと思っていたのが、この頃は60~70年代アメリカン・ナイフ再発見の話です

伝統

いつものパンフレットの冒頭から。

The Heritage

Smith & Wesson has been a name of distinction among sportsmen for more than a century. The S&W seal on the blade of each of these knives is your assurance that it has been carefully made according to a long tradition of quality.

Smith & Wesson knives have a distinguished pedigree. They have been designed by the hand of custom knifemaker Blackie Collins and bench made with the skill inherited from over 120 years of Smith & Wesson expertise in metalworking.

伝統

Smith & Wessonは、1世紀以上にわたってスポーツマン達の間で著名なブランドであり続けてきました。これらのナイフのそれぞれのブレードに刻まれたS&Wの紋章は、それが高品質の長い伝統にのっとり丹念に造られたことの証です。

Smith & Wessonのナイフは、由緒正しい血統をそなえているのです。それらはカスタムナイフメーカーであるBlackie Collinsの手によりデザインされ、120年を超えるSmith & Wessonの金属加工のノウハウを受け継いだ技術で手造りされました)

 

-市場的に見れば、ハンターは必ずナイフを必要とするので、従来の顧客はそのままターゲットになる。銃器製品の販路もそのまま生かせる。
-すでに定評ある知名度の高いブランドである。
-鍛造・加工・熱処理の高度なノウハウが生かせる。

 このような理由から、銃器メーカーがナイフ事業を始めるのは非常に理にかなっている。現在、S&Wのほかにも銃器メーカーブランドのナイフは数多く販売されている。

 しかしひとつ致命的に残念なのは、それらのほぼすべてが自社製造ではないという一点である。現行のS&Wナイフは、看板を貸しているだけで、実際には(おそらくデザインから)まるっきりの外注であるようだ。別にそれはそれで安価で、使えるナイフなんだと思うが(私は使ったことはない。案外よい製品なのかもしれないが、デザインが好みではない)、そこには伝統もクソもないんである。

 とにかく市場は安い製品を求めていて、ちょっと高いが本当に良いものには見向きもしないのか?そう判断したからこその現状なのだろうと思うが、古くは日本、そして台湾、今は中国と人件費の安いところで製造するというスタイルは、もう時代には合ってきていないような気もする。

 かといって米国内自社製造に回帰して儲かるのかといえばそれもよくわからない。そもそもこれらオールドS&Wナイフにしたところが、造りはカスタムメイド並みでいて、値段は品質の割にかなりお買い得感のあるものだった。だが、お買い得であるのは間違いないが、当時の競合である日本製その他のナイフはそこそこ品質がいいものもあれば粗悪品もあり、とはいえ値段は桁違いに安く米国内で販売されていた。そうなると特にこだわりのない層は安いほうを買うし、こだわりのない人のほうが圧倒的に多い。

 パンフレットのキャッチフレーズではないが、「違いの分かるスポーツマン」が買ってくれるとしても、その1丁を生涯使えるわけで、あるいは息子に引き継がれ長く使われていつまでたっても次の1丁が売れないということにもなりかねない。

 というわけで、多品種展開、頻繁な新製品の発表、新素材/新鋼材の採用、各界専門家とのコラボレーション、限定品の発売等々、ナイフメーカーは生き残りをかけていろいろな取り組みを行っている。しかし率直にいうと(天の邪鬼と言われそうだが)、新しいナイフほどつまらないんだよなァ。