Old Smith & Wesson Knives

当初はオールドS&Wナイフネタを書こうと思っていたのが、この頃は60~70年代アメリカン・ナイフ再発見の話です

思い残しのGerberナイフ

 以前は60~70年代のナイフをずいぶんコレクションしていたのだけど、それぞれ使い分けて万遍なく使いこなすというまでには至らず、結局、使わないものは友人にあげる等で処分していた。要するに、買い過ぎだろうという話なんであるが、中途半端な探究心とか蒐集癖によるものである。

 残っているのは、S&Wのボウイ、D.Boyeのベーシック*1、Gerberのビッグ・ハンター、ミニ・マグナム、フォールディング・スポーツマンⅡ(バスコウェア鋼のもの)、Gil Hibbenのボウイナイフ(「Bish」)、そして新しいものだとGTナイブズのフォルダーといった感じである。探せば他にもまだあるかもしれないが、キャンプなり山遊びなりで使うのは、私の場合はこれで十分以上であった。 

 ウサギの解体をする機会が時々あり、渓流魚を頻繁に捌いていたが、ミニ・マグナムやFS2が使いやすかった。

 いろいろ買い集めては試してみて、コレクター気分が満足してしまったのと、海外に駐在した状況もあって、最近は新しいナイフを買っていなかった。時々現行のナイフをWebでチェックしていたのだが、タクティカルやらブッシュクラフトやらのブームのせいもあって、好みのナイフも製造されず、特に手に入れたいと思うものもなかったんである*2

 その間、鋼材は著しい進化を遂げたように見え、また、中国製の質の悪いナイフも多く市場に出ているようだったが、いずれも購買意欲をそそるものではなかった。実用アウトドアナイフは70年代アメリカで完成を見ているという思い込みが、たぶん私にはあるんだよな。

 で、最近は頻繁に東京に出張で来ているのだが、仕事と飲み会以外にあまりやることもないため、またぞろ刃物店のチェックを再開したのである。思えば10~20年前くらいはちょっとしたアウトドアナイフのブームで、刃物店も勢いがあったのが、今では残っている実店舗は少ない。少ないが、昔好きだったGerberのビンテージ品の値段なんかは割と落ち着いている。品揃えは多くないが、これも時代の流れだろう。古い製品はいずれ消えゆく運命である。

 そんな折、昔興味があったものの、良い出物がなかったり、けっこう高く感じたりで買っていなかったGerberナイフの存在を思い出したんである。C375とC425がそれだ(どちらかを買おうと思っていた)。このCというのはCustom Series Knivesの型番で、375、425というのは刃長を表し、それぞれ3.75インチ、4.25インチを意味する。その最初期に「Natural forest green」のプラスチック・ハンドルのものがある。当時のGerberのラインナップの近代化を図るモデルだった。

 

非業のGreen resin

 このいかにもアル・マーなデザインのナイフは、当初そのハンドルが「space-age plastic resin」のモールド成形、ブレードはGerber伝統の高速度鋼、新型の鞘(Gerberは鞘をシースではなくスキャバード(Scabbard)と称している)も「特許出願中のフロント・ブレーク・アウェイ型」という、Gerberの気合がうかがえるものだった。

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 このくすんだヒスイのような色合いのハンドルのナイフがあまり出回っていないのは、1975年から1年ほどしか製造されず、数が少ないためである。Gerberの気合に反して、市場ではこのプラスチックハンドルは受け容れられず、その後、黒檀(この素材の品質が素晴らしい。マッカーサー・エボニーかな?)やサンバー・スタッグ・ホーンに柄の素材が代わり、引き続き製造されたがヒットにはならなかったと思う。

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 なぜこんなに優れた製品が売れないのか、とGerberもアル・マーも悔しがっただろうが、時代の先を行き過ぎていたのかもしれない。その辺の理由の本当のところは私にはわからないが、商業的には失敗で、その後のAシリーズはそこそこヒットとなった。

 製品として非常に優れているにもかかわらず、時代に受け容れてもらえなかった非業のモデル?というわけなのだが、こういうのが天の邪鬼な私の好みである。とはいうものの真剣に探すというわけでもなく、何となく、いい出物があったら買おうかなという感じで、ちょっとした思い残しではあった。

 話がくどくなったが、この緑プラスチック柄のC375かC425を手に入れたいと思いながら、10年以上が経過していた。それが、そのC425緑ハンドルの出物(未使用、箱・パンフレット類も揃っている)が近所の刃物店に入荷していたんである。

 40年前の新品購入を追体験できるのは、よい環境で保管していたコレクターのおかげであり、ありがたい話である。元々の価格も手頃な感じだったのが、確認してみると「七夕祭り割引*3」でさらに20%引き、ということで、私の手元に来たのだった。

 

 手に取ってみると、サイズの割に羽のように軽いナイフだ。

 同梱のパンフレット(簡易カタログ)によれば、

・現代のアウトドアーズマンの要求(頑丈であること)を満たす超近代設計と伝統のクラフトマンシップの融合
・フォレストグリーンの柄は宇宙開発時代(1975年のspace-ageである)のプラスチック素材を、刻みを付けたブレードタングと共に一体成型、頑丈なだけでなく、暖かみがあり手に快適な素材
・用途に合わせ6タイプを用意

 といったところがポイントのようだ。説明では、ブレードとハンドルを一体モールド成形しているような書き方だが、ハンドル素材、鍔(真鍮)、ブレードは、それぞれエポキシ系接着剤で接合されているように見える(銀ロウは使っていない)。

 

ブレード

 C425のブレードは0.125インチ、約3mm厚で、モーラナイフによくあるような刃厚である。「extra-strong blades」というほどのものか?というのが今日の我々の感覚なんだけど、高速度鋼ブレードとしては当時のGerberハンティングナイフ中最大のマグナム・ハンターと同じと思えば、確かに肉厚ではある。後のアーモハイド・シリーズ、A425も2.5mmくらいだから、Gerberとしては厚めということになるのだろう。

 思うに、小型の魚やウサギ(あるいはもっと大型の獲物)を捌くのに使いやすいミニ・マグナム(0.062インチ、約1.6mm)などは、硬めの高速度鋼で適度にしなり、その用途において切れと強度が両立されている感があった。ただし、例えば木片を削るというような用途にはやや薄く、そのしなりがかえって使いにくいということにもなる。

 より広範な用途に使えるようにするには、刃厚を増すのは一つの方法だが、必要以上に厚くすれば、切れと切れ抜け性が犠牲になる。元々、Gerberは特殊な高速度鋼ブレードの利点として、その刃先強度が高いことから、当時一般的な刃角であった20°(トータルで40°)より鋭い15°前後(トータルで30°)の切り刃とし、刃持ち性能を保ったまま(あるいは従来の刃物以上で)、より切れる点を宣伝していた*4

 このせっかくの高速度鋼の利点を損なわず、ある程度の剛性を持たせるには3mm程度の厚さが落とし所だったのだろう。ともあれ、この時期に発売されたFSⅢやマグナム・フォールディング・ハンターのブレードが、Cシリーズの一部モデル同様0.125インチ厚に設定されていたのは、従来の切れ優先から、用途拡大への路線変更(あるいは「頑丈な」ラインナップの追加)を意図していたものと思われる。

 工場出荷時の刃付け角は、薄刃のアーモハイド・シリーズに比べると幾分鈍角であるように見える。20°(トータルで40°)よりわずかに鋭角という感じだ。かつて所有していた、同時期のFSⅢと同じような感覚で、特に切っ先にかけては若干厚ぼったい。やはり強度重視の方針なのだろう。

 1960年代のビッグ・ハンターの刃は、C425の刃角の半分近いような薄い鋭角で刃付けがされており、そのカミソリのような切れは肉をスライスするような用途では最高の効果を発揮する一方で、何か硬い物を削るような使い方だと、やや心もとない感覚はあった。

 1975年前後のGerberの一部の「頑丈モデル」に見られる厚ぼったい刃付けは、おそらく、荒い使い方をするユーザからのクレーム(刃を曲げたり、エッジをよれさせたりといったトラブル)や要求によるものだったのではないかと推測する*5*6

 

ハンドル

 さて、「space-age plastic resin」というのは何なのか?ナイロンという情報もあれば、私はこれまで何となくデルリンなんだと思っていた。Gerberが他のナイフの柄に採用したプラスチックといえばこの時代だとデルリンであったからだ。

 見た目は確かにナイロン樹脂のように見える。ただ、何のひねりもないナイロンの塊を持ってきてスペース・エイジの素材とは言わないような気もするし、かといって、ナイロン系でもグラス・ファイバー強化のザイテルはもう少し時代が後になると思う。ライナイト(ポリエステル系)だと時期的にはどうなんだろうか?*7

 仔細に観察すると脈理が見え、握って人差し指のかかるあたりが注入(射出というべきか?)口の位置であることがわかる。

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 Gerberは、何の樹脂なのかについて、私が知る限りではアナウンスしていない*8。個人的な好みとしては、この色合い・質感は好きである。バランスもよい*9

 が、しかし後述するが、残念ながらこのハンドルが、1年間で製造中止となった原因であると推測される。

 

デザイン

 Cシリーズがアル・マーによるデザインというのはよく知られているが、感心するのはそのシンプルな実用美で、デコレーションの排除はこの頃までのGerberの伝統ではあるのだが、それがさらに徹底されているんである。ハンドルの腹に「GERBER C425」と、焼き鏝でスタンプしてあるだけで、ブレードにはなんらの刻印もプリントもない*10

 外形は、端正な曲線と直線で構成され、複雑な面もないシンプルなナイフだ。ハンドルは、成形を途中で切り上げたように見えるほど素朴な形状をしている。柄の断面は比較的スクエアな角を残したもので、これは私の好みにあう。この最小限の構成でありながら、どのような握り方でもしっくりと手に馴染む、使いやすいナイフとして、ラブレスの影響を感じるものの一味異なるデザインは、やはりアル・マーの才能なんだろうな*11

 こういうデザインは、凡才には不可能で、凡才はいろいろとやり過ぎてしまうのである。ハンドルもどうせ一発成形なんだから、ここを窪ませ、そこを出っ張らせ、この角を丸めて、滑り止めのテクスチャをこうして、ランヤード・ホールを開けて、平面部分にはメーカーロゴを入れて、High Speed Tool SteelとGERBER、Made in USAの刻印も入れて、メーカーロゴのメダリオンもつけて等々で、ダメナイフとは言わないが、少なくとも凡庸なナイフの出来上がりである。

 

スキャバード

 スキャバードというのは、要するに鞘、シースのことで、当時のGerberは鞘をスキャバードと称していた*12。C425の紙箱(いわゆる黒箱)にも、「CUSTOM C425 INCLUDES SCABBARD」のステッカーが貼ってある。当時の定価も印刷されており、30ドルである。

 Green resinのCシリーズは、1975年からおよそ1年間の生産だが、鞘にはGerberの社名と所在地、モデル名と共に「特許出願中(PAT. PENDING)」のスタンプがある。厚く硬い革を、粗い黒色塗装で仕上げたシースである。色が褪せると深緑色を呈する。ステッチの幅がやけに広く感じる。

 その後、ハンドルが黒檀に変更された時のシースを見ると、エナメル仕上げではなくライト・ブラウン・タンの革のもので、PAT. 3958330とスタンプされているところから特許は無事付与されたことがわかる*13

 それまでのGerberの鞘は、なんというか、ポーチ型というかインディアン型の革鞘で、Cシリーズ初期のフロント・ブレーク・アウェイ型は、インディアン型シースの変わり型のようなものだ。インディアン・シース(と便宜的にここでは呼称する)というのは、革を二つ折りにして縫い合わせ、ベルトループを取りつけたようなシンプルな鞘で、鍔から柄の半ばくらいの部分を、成形した鞘上部で挟み込み、その摩擦で差し込み位置を固定し、刃は鞘の中でフローティングしているような構造である(私の理解では)。

 ナイフの固定に留め革を使うのではなく、革鞘(あるいは鞘のなかご)じたいのテンションを利用する、この形式(特に、なかごを鍔のストッパーとして内部に付き出させた、俗にラブレス・ポーチ型と呼ばれる形式)は、構造がシンプルで、理に適っており使いやすい。意外に耐久性もある。しかし、使い込むに従い、固定が次第に緩くなってくるのは避けられない。安全上、その勘合はきつめがいいが、あまりきつくすると今度は抜き差しがしにくくなる。

 この特許では、鞘の、鍔とハンドルが格納される部分に縦の切れ込みを入れ、抜き差しをし易くするのと同時に、切れ込み部分を覆うように、ジャンパーホックで開閉するストラップを取り付け、ナイフの固定を確実にしたものだ。

 確かに、Gerberの従来からのインディアン・シースは、使用に伴いナイフの固定が緩くなるという感覚は実感としてもある。革は伸びたり、圧縮されたり、摩耗したりするからだ。

 そのあたりの問題を解決しようとした、この改良は、確かに功を奏していて、ストラップを留めるとナイフはがっちりと固定される。シースの中でナイフは微動だにしない状態で、野外で走り回ったりしても抜け落ちる心配はゼロである。

 刃先方向の長さに余裕があり、硬い革でしっかり作られた鞘は、この仕掛けで確かに安全性が高いと言える。しかしながら、この後しばらくすると、この型の鞘は廃れ、元のインディアン型シースに回帰していく。ジャンパーホックを開閉する手間がユーザに嫌われたのか、あるいは製造コストの問題かわからないが、いずれにしても長続きはしなかった。つくづく非業のモデルである。

 ちなみに、この鞘は、ベルト・ループが最上端にくるタイプなので、ベルトにつけた際には、ベルト下の長さがやや長くなる。ベルト上にハンドルが突き出さない鞘は肥満体のユーザに向いている。装着位置を上にしたい場合は、ラブレス・ポーチ型の鞘を誂える必要があるが、市販品として、 Sharpshooter Large Universal Pouch Sheath (model SS04)という汎用品*14がぴったり合う。

 ポーチ型の革鞘は比較的簡単に作れるので、自作するのも面白い*15

 

実用性

 話を戻して、実用上の話をすると、切れ味・長切れ性能に定評のあったGeber伝統のM2ハイス鋼のブレードは、その形状も含め何の文句もない。ステンレス鋼と比較して錆びやすい問題は工業用硬質クロムメッキでカバーされている。これは数十年を経ても剥離しているものを見たことがないくらいの高品質メッキである。

 高硬度と高い耐摩耗性により研ぎにくい問題は、ダイヤモンド砥が手軽に入手できるようになって解消されたと言ってもよいだろう。ダイヤ砥も、工場出荷時の刃角を自分好みに修正するときに使うくらいのもので、日常的な研ぎであれば、例のスポーツマンズ・スチールで十分だ。

 敢えて言えば、これはCシリーズに限った話ではなく、同時期のGerberのフォールディングナイフも同様なのだが、ブレードべベルの研削様式により、実質的なカッティング・エッジの開始点がハンドル上端からやや遠いのは問題といえるかもしれない。このあたりの処理は後のAシリーズが優れている、というか好みである。

 このあたりはブレードの強度との兼ね合いでもあるのだが、切り刃はやはり手元に近いところから始まっているほうが使いやすく感じる。C425に限って言えば、刃元を使って細かい作業を行う際には(用途としては木や竹の細工だろうか)鍔の上、ブレードの基部に指を掛けるようなグリップはできるので、大きな不便はない。

 問題はハンドル表面の仕上げである。ツルツルに磨き上げられた硬質プラスチックは、濡れた手でも案外滑らない。ところが、油脂や魚類のぬめり、石鹸水のようなものが附着すると、ご想像の通りの状況となるんである。ハンティングナイフとしては致命的な問題で、このあたりが、「space-age plastic resin」ハンドルが1年続かずに黒檀ハンドル、そしてスタッグハンドルに切り換わっていった理由の一つなんじゃないかと想像する。

 製品開発としては一大ミスなのだが、新素材を使った新シリーズで、それなりにテストしていたはずなのに、なぜこういうことになるのか?

 まあ、滑るだけが問題なら表面の仕上げを変更する方法もあったのだろうが、このハンドルを観察すると、型から抜いたプラスチックをそのまま使っているわけではなく、ブレード、ガードに接合したのち、手作業で研削・研磨して仕上げている。したがって、金型を修正加工すればいいというものでもなく、研磨加工後さらになんらかの滑り止め加工の行程を追加しなければならない。また、そもそもプラスチックが安っぽく見えて売れない等の事情もあったものと思う。

 スペース・エイジの新素材と言われれば、なるほどと感心するわけだが、だからと言って、ショーケースに入って店頭で見栄えがするものではない。軽量でバランスが良いという最大の長所も、70年代アメリカでは安っぽいと判断されたかもしれない。

 一方で、黒檀に変更して確かに滑りにくく高級感のあるナイフになったとしても、強度や耐水性、耐汚性という実用ナイフに求められる性能はある程度犠牲になる。

 というわけで、今日、このデザインの美しい、軽くてバランスの良い、良く切れ使いやすいナイフを実用とするには、ハンドルの滑り対策が必要であって、チェッカリングするなり滑り止め素材を貼るなりの手当てがいる。

 表面を削って凹凸を付けるのが効果的な気がするが、コレクション的な意味合いもある物品に不可逆的な加工はためらわれる。何か薄い滑り止め素材を貼りつけるというのが穏当ではある*16

 経験的には、Armorhideハンドルであっても油脂に塗れるとやはり滑る。私のビッグ・ハンターは1960年代のクローム・メッキのハンドルだが、これももちろん滑る。ニスや乾性油で仕上げた木材ハンドルも滑る。安全カミソリの柄などは、滑らないように設計してあるが、それでも石鹸がつくと滑りやすくなる。

 滑りを防ごうと思えば、表面仕上げをよっぽど攻撃性の高いものにするか、粘着性のあるものにするか、あるいはフィンガー・グルーブのような形状にするかという感じだが、これもそれぞれ得失があり一概に採用できるというものでもない。

 猟師の様子を見てみると、割と小ぎれいに(ハンドルにドロドロをつけないように)ナイフを使う人もいれば、気にせず両手がドロドロの人もいる。小ぎれいに使うといっても程度の問題で、やはりゴム手袋に血脂がいくらか附着するのは避けがたい。Gerberのテスターは、「小ぎれい派」だったんだろうか?

 Gerberが後に採用したクッショングリップ・ハンドルや、最近見られるサンドブラスト処理を施したマイカルタ素材なんかは、ドロドロ派に良さそうだが、一方で衛生上の問題がありそうだ。

*1:David Boye Basic3:440C鋳造で、フラット・グラウンド・ブレードのもの。現在では製造されていないようだ。

*2:考えてみれば、ブッシュクラフトのブームによって、プッコに代表される北欧の伝統的ナイフがメジャーになって、そういう意味では特に悪いものではなかったのかもしれない。北欧伝統ナイフ、いいよね。

*3:阿佐谷パールセンター商店街には七夕祭りというイベントがある。

*4:刃付け角に関して、このように自覚的なメーカーは当時Gerberくらいだった。ライバルメーカーとも言うべきBuckが、一般的なナイフの工場出荷時の刃付け角を従来より鋭角な15°に変更したのは、これから何十年も経っての話であった。

*5:今は知らないが、この時代の「アウトドアのエキスパート」は、少数の例外を除き、概ね薄手のブレードを好んでおり、3mmが限界の最大厚さである旨がカヌーイングの神様Cliff Jacobsonの本に書かれていたりする。料理をメインにしたキャンプの軽作業用途では確かにそれくらいが程良いようでもある。北米の伝統的アウトドアスタイルでは斧を装備するのが普通であり、ナイフを鉈のようには使わない。

*6:Piragis Northwoods Company Boundary Waters Blog: BLOG 61. How To Pick a Good Camping Knife

*7:確かGerberは、ごく短期間にボルトアクション・シリーズのハンドルにライナイトを使ったこともあったと思う。この時代の夢の新素材と言えば、やっぱりデュポンの開発なんだよな。

*8:ナイフ研究家のSteve Shacklefordは、著書の『Blade's Guide to Knives & Their Values』でナイロンと表記している。やはり研究家のBernard Levineも、著書でナイロンと書いている。何らかの裏付けがあっての記述だと思うが、いわゆるナイロン説はこのあたりから来ているようだ。ナイフに限らず、こういう二次情報の再生産というか引き写しで拡大するのはよくある話である。ナイロン系といっても幅広い種類があるので何とも判断しがたいところだ。

*9:プラスチック素材なので軽く、薄いブレードとよくバランスが取れている。アルミ・ダイキャスト・ハンドル(GerberでいうところのArmorhideシリーズ等)は頑丈だが、その重さゆえにハンドル・ヘビーな傾向があり、これを嫌う人もいる(ハンドル・ヘビーがいちがいに悪いというわけではない。私は使いにくいと感じたことはない。言われればそうかなという感じである)。寒冷地での使用においては金属の冷たさも問題になる。

*10:時代が下ると、ブレードに商品名やメーカー名、鋼材種別だのをゴテゴテとエッチングしてあったり、ハンドルにさえ文字を入れているナイフも多くなったが、マーケティング的理由があってのこととはいえ、何か子供騙し的な印象を受けるのも事実である。後にアル・マーは独立して自らのブランドでナイフを世に出したが、ブレードにスタンプされた「馬国森」の赤い篆刻風のロゴはデコレーション以外の何物でもなく、今となっては本質のプロダクトデザインで勝負していない感じがする。

*11:1年後発のAシリーズは、Cシリーズと似たハンドル・デザインであるが、よりラブレスっぽいデザインになった。もちろん使いやすいデザインなのだが、アル・マーの独自性は薄くなった。Aシリーズの初期試作品で、Cシリーズと同形状のハンドルのものがあったが、結局変更となったのである。Aシリーズはアルミハンドルで重量が増すため、使い勝手に影響しない範囲で肉抜き・軽量化設計を行ったと想像する。

*12:Gerberが、今もスキャバードと呼んでいるのかどうかは知らない。

*13:特許情報によれば、Filed:05/21/1975 、Issued:05/25/1976、SPONSORING ENTITY:Gerber Legendary Blades、INVENTORS:Hutchens, Douglas R. とのことだ。

*14:これは安価ながら必要十分な品質の革鞘で、米国製である。おそらくウェット・フォーミングを前提に販売されており、購入後使いたいナイフに合わせて整形するものだ。工場生産のナイフに仕上げの良いカスタムシースを合わせると、ちぐはぐな感じになることもあるのだが、これは仕上げのほどほど感がファクトリー・ナイフに合う感じだ。Gerber Aシリーズにもお勧めである。

*15:革鞘の自作方法の例:Cliff Jacobson Notes Archive Page: Copyright Cliff Jacobson, 2001, Used online exclusively with permission by Piragis Northwoods Company CLIFF JACOBSON V19 , How To Make A Knife Sheath - Handmade Knife Sheath - Leather Sheath 革鞘作りに始まってレザークラフト趣味に足を踏み入れる人も多いんじゃないだろうか?凝るといろいろ複雑な形状にしたり、シャープニング・スチールやマグライトなんかを共差しにできるような鞘を作ってしまうが、実用を考えると、やはりシンプルなデザインが良いようである。個人的には大きく重いナイフの場合はやはりベルトに吊るのだが、小型軽量のナイフは鞘に納めた状態でポケットに突っ込む使い方が好みである。ベルトにごちゃごちゃぶら下げるのがあまり好きじゃないんだよな。そういう場合にはやはりシンプルな鞘が良い。

*16:パーマセル・テープなんかが良さそうだが、使っているうちに汚い感じになるかもしれない。正直、表面を加工したい誘惑はある。熱圧着で何らかのテクスチャを転写できるかもしれない。中古品でチェッカリングを彫ったものをみたことがあるが、どうもイマイチであった。